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【数学の学習に主体的に取り組む子どもを育成する指導②】子どもどうしでの会話を可能にする環境づくり

  • 子ども
  • 対話
  • 主体的・対話的で深い学び
  • 学びあい
  • ペア学習
  • グループ学習
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目次

はじめに

数学の学習に主体的に取り組む子どもを育成するために、教育現場として取り組むべき課題とは何か。現在、東京都教職員研究センターで東京教師道場の担当をし、指導力向上のためにがんばっている先生方の指導を行っている小宮賢治先生に、この大きな課題を解決するための、指導上の要点や、子どもたちとの向き合い方について、記事をご執筆いただきました。

今回は第2回として、【数学の学習に主体的に取り組む子どもを育成する指導】をテーマにご執筆いただいた「子どもどうしでの会話を可能にする環境づくり」を紹介します。

本記事の執筆にあたっての小宮先生からのメッセージはこちらの記事をご覧ください。
SAMEにおける「数学の学習に主体的に取り組む子どもを育成する指導」の執筆にあたって

子どもどうしでの会話を可能にする環境づくり

第1回でも触れましたが、子どもは、自分の所属する学級に居場所を求めています。

ときどき、学校における授業風景を眺めていると、学級全体で発言を求める際に、下を向いていたり、発言をしようとしない子どもを見かけます。さらに関わりをもとうとしない場合では、グループでの子どもどうしの学びあいにも参加しようとしないことがあります。

 私は以前、小・中学校で連携して、算数・数学の研究をしていたことがあります。その際、児童・生徒への質問調査をしたことがあります。「先生へ聞くことと友だちに聞くことでは、どちらがわかりやすいか」といった内容です。置かれている環境によることとは思いますが、ほとんどの児童・生徒が友だちに聞いた方がわかりやすいと回答していました。

子どもにとって、友だちの存在とは、いかに大きなものであるかがわかると思います。

また、以前、日本数学教育学会の調査資料に中学生が、学びあいを全体で行う前に、「少し近くの人と考えあう時間がほしい」と回答した生徒が多いことについて報告されていました。その理由は、わからないまま学びあいが進んでいくと、なかなか言い出せなくなって、考えるのが嫌になってしまうといったことでした。

子ども相互で学びあうことの大切さを述べてきました。次に、どのようにすれば子どもどうしでの学び合いが、充実するのかを述べます。

1つは、学習する内容について、子ども一人ひとりの既習事項の理解状況や友だち関係をもとにして、子どもの座席を考えてあげることです。当然のことながら、事前の調査等を通して、指導者は把握しておくことが必要になります。子どもが相談しやすい環境をつくってあげることです。こうした準備は手間がかかりますが、子ども一人ひとりが授業で学習に取り組むようになり、授業後に子どもの学習への取り組みで悩むことは激減します。とくに、ペア学習やグループ学習の活性化が図られるようになります。

もう1つは、子どもを中心にして授業が展開するよう、指導者は脇役に徹することです。

指導者の説明が長くならないように心がけ、学級などの場をともにする子どもどうしが、意見交換して学びあいができるようにすることです。そのためには、子どもに発表させる場面を計画的に設定して、子どもどうしがお互いに意見交換できるようにするとよいでしょう。指導者が、発表内容をよい、悪いで評価する場面を見かけることがあります。発表内容についての評価、補足、疑問点は、子どもたちから出させたうえで、授業を展開していくようにしたいものです。指導者は、子どもどうしお互いの会話がつながるよう、助言することが大切です。

次回は、既習内容の理解度を把握することについて説明します。


小宮賢治
本稿の執筆者 小宮賢治
公益財団法人 日本数学検定協会 理事

東京都公立中学校長、東京都中学校数学教育研究会会長等を歴任。現在は、東京都教職員研修センター 学習指導員(東京教師道場)として、数学の指導力を高めようとがんばっている先生方の指導を行っています。