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【数学の学習に主体的に取り組む子どもを育成する指導⑦】自力解決の際に評価して指導をする

  • 問題解決
  • 自力解決
  • 評価規準
  • 評価基準
  • 机間指導
アイキャッチ
目次

はじめに

数学の学習に主体的に取り組む子どもを育成するために、教育現場として取り組むべき課題とは何か。現在、東京都教職員研究センターで東京都教師道場の担当をし、指導力向上のためにがんばっている先生方の指導を行っている小宮賢治先生に、この大きな課題を解決するための、指導上の要点や、子どもたちとの向き合い方について、記事をご執筆いただきました。

今回は第7回として、【数学の学習に主体的に取り組む子どもを育成する指導】をテーマにご執筆いただいた「自力解決の際に評価して指導をする」を紹介します。

本記事の執筆にあたっての小宮先生からのメッセージはこちらの記事をご覧ください。
SAMEにおける「数学の学習に主体的に取り組む子どもを育成する指導」の執筆にあたって

自力解決の際に評価して指導をする

問題解決の授業では、子どもが問題解決の見通しをもち、自力で解決するための時間が重要です。問題解決で、自分なりの考えをもつことができるようになれば、グループの学習で、自分の考えを周囲の人に説明できることにつながるからです。自分の考えをもたずに人の話を聞いているだけでは、参加意識も薄れ、子どもの主体的な取り組みは期待できません。そのため、問題解決の見通しをもたせる指導は、たいへん重要です。しかし、その指導を行っても子どもによっては、なかなか自力解決の取り組みを苦手とする場合もあります。

すべての子どもが自力解決に取り組めるようにするために、指導者として気をつけたいことは、子ども1人ひとりへの適切な評価と指導をすることです。

授業の目標に即した評価の規準は、それぞれの授業で設定することになりますが、その評価規準を受けて、子どもに即した評価基準をくわしく設定したうえで、子どもの実態を把握することが大切です。評価基準は、授業前に教室の子どもの学習状況をもとに、3段階くらいで設定しておくとよいと考えます。

たとえば、中学校第2学年の図形の基本的な平面図形の性質に関する問題が、「平行線にはさまれた『くの字』に折れた角の大きさを求めなさい 図形が平行線と交わる2つの角は与えている」であるとします。目標が「角の大きさを、補助線を引き、既習事項を根拠にして、求め方を説明することができる」であれば、評価規準が「思考・判断・表現」の観点であり、「補助線を引き、平面図形の性質を用いて角の大きさの求め方を説明することができる」を評価することになります。自力解決の際に、教師が机間指導をしてノートやワークシートの記述内容を観察しながら評価することになります。

その評価基準をたとえば、次のような3段階で設定したとします。第1「複数の補助線の引き方を考え、①平行線の性質や②三角形の内角、外角の性質をもとに求め方を記述している。→指導の視点:複数の求め方を人に説明できるように記述内容の見直しをさせる」、第2「1つの補助線の引き方を考え、前述の①、②の図形の性質をもとに求め方を記述している。→指導の視点:求め方を人に説明できるように記述内容の見直しをさせ、他の補助線の引き方はないか考えさせる」、第3「補助線は引けているが、求め方について記述できていない。または、角度が求められていない。→指導の視点:前述の①、②の図形の性質をもとにして補助線の利用のしかたを確認し、求め方の記述をさせる」。

こうした評価基準を作成するには、当然のことながらレディネステストなどで子どもの実態把握ができていなければなりません。この評価基準で、すべての子どもに即した評価と指導ができるわけではありませんが、準備をしていることで、想定していなかった子どもへの指導も可能になります。

また、机間指導の際、子ども1人ひとりの取り組みをよく観察し、評価して言葉掛けをする指導を効果的に行うには、子どもの座席表などを用いて、誰を見て指導したかわかるように印をつけておくのもよいでしょう。授業のなかで、詳細に記すことは、時間的にも無理であると考えます。授業後に自身で整理するとよいでしょう。十分に見ることができなかった子どもはいなかったか、振り返ることにも役立ちます。

子どもは、指導者のそうした行動に応え、学習に主体的に取り組みます。子どもが自力解決する際の評価と指導について、みなさんの取り組みを期待いたします。


小宮賢治
本稿の執筆者 小宮賢治
公益財団法人 日本数学検定協会 理事

東京都公立中学校長、東京都中学校数学教育研究会会長等を歴任。現在は、東京都教職員研修センター 学習指導員(東京教師道場教授)として、数学の指導力を高めようとがんばっている先生方の指導を行っています。