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【数学の学習に主体的に取り組む子どもを育成する指導⑤】子どもに問題解決の見通しをもたせる指導

  • 問題解決
  • 自力解決
  • 振り返り
  • 気づき
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目次

はじめに

数学の学習に主体的に取り組む子どもを育成するために、教育現場として取り組むべき課題とは何か。現在、東京都教職員研究センターで東京教師道場の担当をし、指導力向上のためにがんばっている先生方の指導を行っている小宮賢治先生に、この大きな課題を解決するための、指導上の要点や、子どもたちとの向き合い方について、記事をご執筆いただきました。

今回は第5回として、【数学の学習に主体的に取り組む子どもを育成する指導】をテーマにご執筆いただいた「子どもが興味・関心を示す教材の準備」を紹介します。

本記事の執筆にあたっての小宮先生からのメッセージはこちらの記事をご覧ください。
SAMEにおける「数学の学習に主体的に取り組む子どもを育成する指導」の執筆にあたって

子どもに問題解決の見通しをもたせる指導

数学の授業では、問題解決の学習を基本にします。子どもが「問題解決に取り組むことができた。」という充実感をもてれば、授業に主体的に関わることができるようになります。 

問題解決には、既習の学習内容について十分理解している必要がありますが、不十分な場合には、それを補う指導を事前に行ったり、授業の導入でレディネステストを用いたりする方法があります。しかし、それでも、問題解決の糸口が見出せない場合があります。そうしたことへの解決には、子どもの言葉で問題解決に必要な方法を子ども自身に気づかせる必要があります。

 子どもの実態に即した授業であることを前提として、次の内容を示します。

 たとえば、中学校第2学年で三角形の合同条件を学習した後に、次のような問題を解く場面があったとします。

 

【問題:2つの合同な三角形があります。対応する1組の頂点どうしを重ねます。2つの三角形は重ねた点を対称の中心として点対称の位置にあります。この図を示し、図からわかることを示してください。それが成り立つ理由についても説明してください。】

 

ここで、問題解決の見通しをもたせるには、「2つの三角形が点対称の位置にあり、重ねた点が対称の中心であるという意味」「三角形の合同の意味」、さらに、対応する1組の辺が平行になりそうだという発表が子どもからあったときには、「2直線が平行になる場合の条件」を確認して、子どもが問題解決に取り組めるようにしてあげることが必要です。

 このことが、問題解決の見通しを子どもにもたせるということです。教師がこの内容を示すのではなく、既習内容の振り返りや気づいたことについて、子どもへの発問を通して子どもに発言をさせて、気づかせることが大切です。その際、子どもの発言した内容を板書して他の子どもに発言内容を確認させることで、子どもたちへの理解を促すことが大切です。しかし、問題によっては、なかなか気づきを得にくいものもあります。その場合は、子どもが発言した問題解決に関係する内容を近くの人と確認し合うなかで、気づかせようとするのもよい方法です。

 このような指導をすることで、子どもは問題解決の見通しをもつことができ、自ら問題解決に取り組むようになります。教師が解法を示すのではなく、子ども自身が問題解決の糸口を見出す取り組みをさせることが大切なのです。

 ただし、理解のしかたは、子どもによって異なります。それについての対応は、子どもが自力解決に取り組むなかの机間指導で補うことになります。

 また、説明を書くことについては、苦手とする子どもが多いのが実態です。子どものいくつかの発表内容を子ども相互で学び合うなかで、友だちの考え方や書き方について学んだことを記載させることで、説明の書き方を身につけさせるとよいと考えます。なお、事前に書き方の基本的な方法や見本を示してあげるのも1つの方法かと思います。

 いずれにしても、子どもが問題解決の見通しをもち、自力解決に取り組むことができるよう、目の前の子どもの実態に即した指導のくふうを継続してお願いしたいところです。


小宮賢治
本稿の執筆者 小宮賢治
公益財団法人 日本数学検定協会 理事

東京都公立中学校長、東京都中学校数学教育研究会会長等を歴任。現在は、東京都教職員研修センター 学習指導員(東京教師道場)として、数学の指導力を高めようとがんばっている先生方の指導を行っています。