先生のノート

高校数学Ⅰ 2次関数・2次方程式・2次不等式の相互関係の一考察【寄稿】

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目次

1. 動機

本校は、立教大学の一貫校であり、9割近い生徒が立教大学に進学する。実用英語技能検定(以下、英検)2級以上の取得が推薦条件の1つにあり、英語の資格取得には英検以外にもTOEIC®、TOEFL®など生徒は積極的に受験している。また、本校には理系文系というコースは存在せず、数学Ⅰ、A、Ⅱ、Bは全員の履修科目である。高校3年になると、自由選択科目という毎年40種類くらい開講する講座から自分の進路や興味に合わせて履修していて、数学Ⅲ(C)はその開講講座の1つである。

また、中高6年の一貫校でありながらも、中学の課程は中学で、高校の課程は高校で指導する学校である。よって、中学1、2年で中学課程を終え、中学3年から数学Ⅰの内容に取り掛かるようなこともない。このような学校であるからこそ、普段から難関大学の入試問題対策より、数学の理念や概念をしっかりと理解することが数学指導の前提になっている。そして、以下の3つの項目が、本校数学科で育てたい生徒の目標である。
●テーマを持って真理を探究する力を育てる。
●共に生きる力を育てる。
●数学科らしい手法などの習得。
最初の2つは本校の教育目標であり、そのために指導内容に以下の(A)~(F)の観点を持つことにしている。(A) 数学の知識・技能を定着させる内容が含まれている。→大部分が(A)のカテゴリーに含まれる。
(B) (社会・自然における)現象を数学的に観察・解釈する題材が含まれている。
(C) 自ら問題を見つけ、数学的な手法により解決する題材が含まれている。
(D) 数学を積極的に使うことで、その手法や考え方を他の生徒と身につけていく題材が含まれている。
(E) 物事を論理的に考え、説明·発表する手法を身につける内容が含まれている。
(F) 学習計画を自ら立て、主体的に学ぶ姿勢を身につける内容が含まれている。
指導する単元や内容が上記の(A)~(F)のどれにあてはまるのかを常に意識することが課されている。
このようなカリキュラムで実施された授業実践報告である。

2次関数の単元では2次関数を核にして、2次方程式、2次不等式を統合的に扱われている。
そこで、2次関数・2次方程式・2次不等式の相互のつながりを2次方程式の解の公式を中心に考えた。 解の公式は中学3年でも履修するが、公式を導き、どのように使うかが中心で、解の公式の意味や解の視覚化などは中学3年生にとってはまだ難しい。


2. 2次方程式の解の公式とは

\(x\) の 2 次方程式 \(a x^{2}+b x+c=0\) の解は
\[x=\frac{-b \pm \sqrt{b^{2}-4 a c}}{2 a}\]である。解の公式の証明の途中にもあるように、解の公式は
\[x=-\frac{b}{2 a} \pm \frac{\sqrt{b^{2}-4 a c}}{2 a}\]のように2つ部分を1つにまとめたものである。簡略化するために判別式 \(D=b^{2}-4 a c\) を用いると
\[x=-\frac{b}{2 a} \pm \frac{\sqrt{D}}{2 a} \quad \cdots(1)\]である。
2次方程式を解くときには、まず因数分解ができるかを考え、次に解の公式の利用を検討することが多い。因数分解による解法と解の公式の関係は後述する。


3. 2次関数の軸の方程式と頂点の座標について

一方、2次関数 \(y=a x^{2}+b x+c\) の軸の方程式と頂点の座標は、以下のようになる。
\[\text { 軸 } x=-\frac{b}{2 a} \quad \text { 頂点の座標 } \left(-\frac{b}{2 a},-\frac{D}{4 a}\right) \quad \cdots(2)\]どの教科書にも、この軸の方程式と頂点の座標は2次関数のグラフとともに記載されているが、どのくらいの方が活用しているのだろうか。軸の方程式と頂点の座標を求めることは、この単元の基本中の基本である。平方完成による指導がどうしても多くなるのではないか。筆者もまさにそうであった。 居残り勉強をさせてでも、平方完成を仕込んだ記憶がある。ところが、平方完成が本当に苦手な生徒がいて、平方完成だけでは正答率が100%にはならなかった苦い経験がある。多くの参考書もまず平方完成ありきであり、(2)を用いることはほとんどない。そして、(2)を丸暗記させるつもりもないが、平方完成がきちんとできる生徒とって(2)は使わない知識になっている。はたして本当にそうなのであろうか。 これがこのまとめの原点になっている。 

図1の放物線 \(y=f(x)=a x^{2}+b x+c\) の軸は \(x=-\frac{b}{2 a}\) である。当然頂点の \(x\) 座標も \(x=-\frac{b}{2 a}\)である。 軸に関しては(1)の前半であり、定着はよい。 次に \(y\) 座標であるが、頂点はグラフ上の点なので、 \(y=f\left(-\frac{b}{2 a}\right)\) で求められ る。よって、頂点の座標 \(\mathrm{P}\) は以下のように考えられる。
\[\mathrm{P}\left(-\frac{b}{2 a}, f\left(-\frac{b}{2 a}\right)\right) \cdots(3)\]この(3)は、(2)と比べて頂点の \(y\) 座標の分母が \(4 a\) であったり、分子が\(-D\)になったりという、 わかりにくい点を簡単にクリアしている。頂点の\(x\)座標が分かるだけで対応できるこの考え方は、グラフ上の点という既存の知識に則ればよい。


4. 2次関数のグラフと \(x\) 軸との位置関係と解について

2次関数のグラフと \(x\) 軸との位置関係は下の図2のようになる。今後は、2次方程式・2次関数・2次不等式を問わず、 \(b^{2}-4 a c\) を判別式といい、\(D\)で表すことにする。ここで判別式を再定義したのは、2次方程式の判別式と2次関数の判別式は異なるものかという質問から、2次式に共通の概念として、 \(D=b^{2}-4 a c\) を判別式と再定義した。2次関数のグラフには、判別式\(D\)の符号に依らず軸が存在する。軸は直線 \(x=-\frac{b}{2 a} \)であり、頂点の\(x\) 座標も容易に分かる。
次に、判別式の符号を調べ、図 2 のどれにあてはまるのかを考える。

・\(D>0\) のとき \(\Leftrightarrow x\) 軸と2点で交わる \(\Leftrightarrow\) 2次方程式 \(y=0\) は異なる2つの実数解をもつ

そこで、図3のように、2次方程式 \(a x^{2}+b x+c=0\) の解とは、2次関数のグラフにおいて、 \(y=0\) となる点の \(x\) 座標である。この2つの異なる実数解を \(\alpha 、 \beta(\alpha<\beta)\) とすると、解の公式(1)から
\(\alpha=-\frac{b}{2 a} - \frac{\sqrt{D}}{2 a} 、 \beta=-\frac{b}{2 a} + \frac{\sqrt{D}}{2 a}\)
となり、図3から \(\alpha\) と \(\beta\) は軸に対して線対称の位置にある。 さらに、2次不等式 \(a x^{2}+b x+c>0 、 a x^{2}+b x+c<0\) の解をそれぞれ \(y>0 、 y<0\) と考えれば、グラフの \(x\) 軸より上側、下側としてそれぞれの解を求めることができる。
\(\quad y>0\) ならば \(x<\alpha , \beta<x\)
\(\quad y<0\) ならば \(\quad \alpha<x<\beta\)
ここで、頂点の座標 (2)\(\left(-\frac{b}{2 a},-\frac{D}{4 a}\right)\) を考えてみると \(D>0\) なので \(y<0\) となり頂点は \(x\) 軸より下側にあることが判断できる。


・ \( D=0\) のとき \(\Leftrightarrow x\) 軸と1点で接する \(\Leftrightarrow\) 2次方程式 \(y=0\) は1つの実数解(重解)をもつ。

図4のように、2次方程式 \(a x^{2}+b x+c=0\) の解とは、2次関数のグラフにおいて、 \(y=0\) となる点の \(x\) 座標であるが、 \(D=0\) より解の公式(1)から
\(\quad \alpha=-\frac{b}{2 a}-\frac{\sqrt{0}}{2 a}=-\frac{b}{2 a} \quad \beta=-\frac{b}{2 a}+\frac{\sqrt{0}}{2 a}=-\frac{b}{2 a}\)
となり、図4から \(\alpha\)と \(\beta\)は一致し、軸の\(x\)座標に等しい。
さらに、2次不等式 \(a x^{2}+b x+c>0 、 a x^{2}+b x+c<0 \)の解をそれぞれ\(y>0 、 y<0\) と考えれば、グラフの \(x\)軸より上側、下側としてそれぞれの解を求めることができる。
\(\quad y>0\) ならば \(\quad x<\alpha , \alpha<x \quad \) あるいは \(\quad x \neq \alpha\)
\(\quad y<0 \) ならば そのような値は存在しない 。
はじめから存在しない範囲を答えることはできないのである。
ここで、頂点の座標(2) \(\left(-\frac{b}{2 a},-\frac{D}{4 a}\right)\) を考えてみると、 \(D=0\) なので \(-\frac{D}{4 a}=0\)  となり、頂点は \(x\) 軸上にあることが判断できる。


・ \(D<0\) のとき \(\Leftrightarrow x\) 軸と共有点はない \(\Leftrightarrow \) 2次方程式 \(y=0\) は実数解をもたない

図5のように、2次方程式 \(a x^{2}+b x+c=0\) の解とは、2次関数のグラフにおいて、 \(y=0\) となる点の \(x\) 座標であるが、 \(D<0\) より解の公式(1)で \(\sqrt{D}\) が実数の範囲では存在しないこととなり、図5から実数解は存在しないことと一致する。
さらに、2 次不等式 \(a x^{2}+b x+c>0 、 a x^{2}+b x+c<0\)の解をそれぞれ \(>0 、 y<0\) と考えれば、グラフの \(x\) 軸より上側、下側としてそれぞれの解を求めることができる。
\(\quad y>0 \) ならば すべての実数である。
\(\quad y<0 \) ならば そのような値は存在しない。
ここで、頂点の座標(2)\(\left(-\frac{b}{2 a},-\frac{D}{4 a}\right)\)を考えてみると\(D<0\)なので \(y>0\)となり、頂点は \(x\) 軸より上側にあることが判断できる。
特に、 \(D<0\) のときの2次不等式を解くときは、 \(a x^{2}+b x+c\) を平方完成し、正の数になることを利用して判断することが多いが、グラフから判断すれば、丸暗記する解法から脱却できるのではないか。



5. 具体的な例題について

今回の話題は、2次関数のまとめとして、知識の整理も兼ねているので、例題は2問考えた。

例題1. 2次関数 \(y=2 x^{2}-7 x-3\) について、次の問いに答えよ。
(1)この関数のグラフの軸の方程式と頂点の座標を求めよ。
(2)この関数のグラフをかけ。
(3)グラフ上に \(y=0\) を満たす点を図示し、 \(x\) の値を求めよ。
(4) \(y>0\) を満たす \(x\) の値の範囲を求めよ。
(5) \(y<0\) を満たす \(x\) の値の範囲を求めよ。

指導例
(1)軸の方程式は、 \(x=-\frac{-7}{2 \times 2}=\frac{7}{4}\)
頂点の \(y\) 座標は \(y=2\left(\frac{7}{4}\right)^{2}-7 \times \frac{7}{4}-3=-\frac{73}{8}\)
よって、 \(\left(\frac{7}{4},-\frac{73}{8}\right) \quad \cdots\) 答

(2)グラフを書く前に
\(D=7^{2}-4 \times 2 \times 2 (-3)=73>0\)
この事実だけで \(x\) 軸と 2 点で交わる \(\rightarrow \) 2次方程式・2次不等式が解ける と意識をもつ。
※平方完成ができなくても、頂点の座標から、2次関数の標準形 \(y=a(x-p)^{2}+q\) の形に変形できるので、 \(y=2\left(x-\frac{7}{4}\right)^{2}-\frac{73}{8}\) とす ることができる。

(3) グラフと \(x\) 軸との交点に点を付ける。 さらに、2次方程式 \(2 x^{2}-7 x-3=0\) を解くが、(1)で、軸の方程式(2)で判別式の値がすでに求められているるので、\(x=\frac{7}{4} \pm \frac{\sqrt{73}}{4}=\frac{7 \pm \sqrt{73}}{4}\) と直ぐにわかる。
\(x=\frac{7 \pm \sqrt{73}}{4} \quad \cdots\)答

(4)、(5)はグラフから \(y>0\) ならば \(\quad x<\frac{7-\sqrt{73}}{4}, \frac{7+\sqrt{73}}{4}<x \cdots\) 答
\(y<0\) ならば \(\frac{7-\sqrt{73}}{4}<x<\frac{7+\sqrt{73}}{4} \quad \cdots\) 答


例題2. 2次関数 \(y=x^{2}+3 x+4\) について、次の問いに答えよ。
(1)この関数のグラフの軸の方程式と頂点の座標を求めよ。
(2)この関数のグラフをかけ。
(3)グラフ上に \(y=0\) を満たす点を図示し、 \(x\) の値を求めよ。
(4) \(y>0\) を満たす \(x\) の値の範囲を求めよ。
(5) \(y<0\) を満たす \(x\) の値の範囲を求めよ。

指導例
(1)軸の方程式は、 \(x=-\frac{3}{2 \times 1}=-\frac{3}{2} \quad \cdots\) 答
頂点の \(y\) 座標は \(y=\left(-\frac{3}{2}\right)^{2}+3 \times\left(-\frac{3}{2}\right)+4=\frac{7}{4}\)
よって、 \(\left(-\frac{3}{2}, \frac{7}{4}\right) \quad \cdots\)答

(2)グラフを書く前に
\(D=3^{2}-4 \times 1 \times 4 =-7<0\)
\(x\) 軸と共有点なし
\(\rightarrow \) 2次方程式は実数解をもたない・2次不等式が解けるかどうか
と意識をもつ。
※平方完成ができなくても、頂点の座標から、2次関数の標準形 \(y=a(x-p)^{2}+q\) の形に変形できるので、 \(y=\left(x+\frac{3}{2}\right)^{2}+\frac{7}{4}\) とすることができる。

(3)グラフと \(x\) 軸との交点に印を付けることができない。 さらに、2次方程式 \(x^{2}+3 x+4=0\) を解くが、(1)で、 軸の方程式は求められるが、(2)で判別式の値が負なので、実数解は存在しない。\(\cdots\)答

(4)、(5)はグラフから
\(y>0\) ならばすべての実数 \(\cdots\)答
\(y<0\) を満たす実数は存在しない \(\cdots\)答

(4)、(5)に関しては平方完成の式から、 \(y=\left(x+\frac{3}{2}\right)^{2}+\frac{7}{4}>0\)となり、グラフは \(x\) 軸と共有点は存在しないという解法が多い。

この方法は、厳密には数学Ⅰで扱っていない。数学IIで扱う等式や不等式の証明などを学習してからきちんと学習するはずである。よって、 \(y=\left(x+\frac{3}{2}\right)^{2}+\frac{7}{4}\) をみて、\(y>0\) を理解するには多少の時間が必要になる。結局、理解が追いつかない生徒は、解法を丸暗記することになってしまわないだろうか。

2次不等式の解法の難しさ(理解の難しさ)は、\(D\)の符号によって解き方が変わることによることが大きいと考える筆者が考えたアプローチである。

最後に次のような例題に触れておく。
グラフが2点 \((\alpha, 0),(\beta, 0)\) を通る2次関数の式を求めよ、という問いである。
解答は \(y=a(x-\alpha)(x-\beta)\) である。さらに軸の方程式は放物線の対称性から、 \(\alpha\) と \(\beta\) の中点から、\(x=\frac{\alpha+\beta}{2}\)である。さらに\(\alpha 、 \beta\) がともに整数ならば、判別式 \(D\) の値は平方数になっている。このような事実をきちんと補足せずに問題を解かせることは避けたい。

このような問いに関しても、グラフをかくことで2次関数を表す式を求めるようにさせたい。

6. 指導を終えて

今回のようなまとめを2次関数の最後にすることで、生徒の理解を助けることになるのではないか。 数学ができる生徒にも、平方完成と頂点の座標による2次関数の見方を並行して活用し、平方完成の検算ができるようになったと好評である。

どうしても解の公式が理解できないという生徒にも、(軸±一定の値) というグラフから解の公式の構造が想像できることで、有効な手段であった。一見無味乾燥な2次方程式の解の公式であるが、2次関数のグラフを併用することで、理にかなった公式であることが理解できるのではないか。

本校の場合、高校生は1人1台のタブレット型 WindowsPC(Microsoft社 Surface Pro)を所有している。 これらのPCには Microsoft Office365®のフルセット、Geogebraのようなツールの他に授業支援のロイロノートがインストールされている。

これらのツールと並行しながら、生徒と授業を組み立てているが、少しでも新たな視点が参考になればと思っている。

※MicrosoftおよびOffice365は、米国 Microsoft Corporation の、米国およびその他の国における登録商標または商標です。

/media/内田 芳宏
記事を書いた人 内田 芳宏

立教池袋中学校・高等学校 数学科教諭