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【数学の学習に主体的に取り組む子どもを育成する指導⑧】学び合い学習その1(ペア学習やグループ学習)

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  • 学び合い
  • ペア学習
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目次

はじめに

数学の学習に主体的に取り組む子どもを育成するために、教育現場として取り組むべき課題とは何か。現在、東京都教職員研究センターで東京教師道場の担当をし、指導力向上のためにがんばっている先生方の指導を行っている小宮賢治先生に、この大きな課題を解決するための、指導上の要点や、子どもたちとの向き合い方について、記事をご執筆いただきました。

今回は第8回として、【数学の学習に主体的に取り組む子どもを育成する指導】をテーマにご執筆いただいた「学び合い学習その1(ペア学習やグループ学習)」を紹介します。

本記事の執筆にあたっての小宮先生からのメッセージはこちらの記事をご覧ください。
SAMEにおける「数学の学習に主体的に取り組む子どもを育成する指導」の執筆にあたって

学び合い学習その1(ペア学習やグループ学習)

問題解決の授業では、自分なりの考えをもつことができるようになれば、グループの学習で、自分の考えを周囲の人に説明できるようになる話を前回しました。自力解決で、自分の考えをもてても自信がなかったりして不安になっている子どももいます。また、少し確認したい内容のある子どももいることがあります。そうしたときには、話しやすい友だちとのペアによる学びは、子どもの取り組みをあと押しすることになります。ただし、教室での子ども相互による学び合いができるような環境づくりに気をつける必要はあります。授業の様子を見ていると、若干ペアによる学び合いに参加できない子どもを見かけることがあります。そうなってしまっては、何のためにペア学習をするのか意味がなくなってしまいます。そのため、日ごろから子ども相互の友人関係や習熟度をよく考えて教室環境をつくっておく必要があります。

ペア学習をする場面としては、ほかにも計算練習を相互に問題を出して答え合わせを行ったり、複雑な問題の正しい理解を図ったりする場面にも有効です。子ども相互でことばを交わすことで学びの高まりも出てきます。

次に、グループ学習です。自分なりの考えをもつことができたあとの学習になります。

グループ学習では、グループで学び合いましょうと指示をしても思うように活動できないことがあります。そのため、グループ学習用に司会や発表用のホワイトボードに書く人、全体での発表者などの子どもの係分担を決めたり、グループ内での発表順や意見交換についての学習の進め方を子どもにわかるように示したりするとよいでしょう。方法としては、口頭以外にもスクリーンに示したり黒板に掲示したりして、子どもが取り組みやすいようにしてあげることです。

また、グループ内の考えを1つにまとめるように指示を出す方もいますが、似た考えはまとめるとしても、異なる考えは必ず紹介できるように記してあげることを考えてください。

全体で考察する場面で、重要な考えや発展的な考えにつながる内容であることもあります。

グループ学習を実施しているときの教師の役割も大切です。教師はグループの質問、疑問に応えることも大切ではありますが、グループ活動に対して評価して指導する視点をもってグループを机間指導することが大切です。その例は、グループ内の学び合いで、問題解決のアプローチを多様に考えているか、同じ解法でも図や表、グラフなどの視覚にわかりやすいものを用いて説明しているか、グループ内での多くの子どもの考え方でない考えも取り上げて考察しているかです。そうした取り組みが、子どもの主体的な学び合いを促すことになります。よい取り組みを期待いたします。

小宮賢治
本稿の執筆者 小宮賢治
公益財団法人 日本数学検定協会 理事

東京都公立中学校長、東京都中学校数学教育研究会会長等を歴任。現在は、東京都教職員研修センター 学習指導員(東京教師道場)として、数学の指導力を高めようとがんばっている先生方の指導を行っています。