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【数学の学習に主体的に取り組む子どもを育成する指導④】子どもが興味・関心を示す教材の準備

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  • 主体的な学び
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目次

はじめに

数学の学習に主体的に取り組む子どもを育成するために、教育現場として取り組むべき課題とは何か。現在、東京都教職員研究センターで東京教師道場の担当をし、指導力向上のためにがんばっている先生方の指導を行っている小宮賢治先生に、この大きな課題を解決するための、指導上の要点や、子どもたちとの向き合い方について、記事をご執筆いただきました。

今回は第4回として、【数学の学習に主体的に取り組む子どもを育成する指導】をテーマにご執筆いただいた「子どもが興味・関心を示す教材の準備」を紹介します。

本記事の執筆にあたっての小宮先生からのメッセージはこちらの記事をご覧ください。
SAMEにおける「数学の学習に主体的に取り組む子どもを育成する指導」の執筆にあたって

子どもが興味・関心を示す教材の準備

子どもたちが、授業で学習内容に興味・関心を示して、主体的に問題解決に取り組むことは、指導者たちの願いであることにほかなりません。

そのために、子どもたちのためにどのような教材を準備すればよいかを考えることは多いと思います。

ある平方根の授業で、「正方形の対角線の長さが分かっているときに正方形の1辺の長さを近似値で求める学習」をしました。この授業の教材に用いたのは、丸太の断面でした。製材所で、長い丸太の断面が正方形になるようにする木材加工の様子をスライドで示しながら、「木材の無駄が出ないようにして正方形の角材を作り出すには、丸太の周囲から何cm内側を切ればよいかという問題」に置き換えました。

子どもにとって身近な社会における仕事内容と数学の学習内容を結びつけて、数学の問題としたことで学習内容への興味・関心を高めました。

実物を実際に触って問題を解決する方法を考えるのも子どもの興味・関心を高める大切な視点です。正多面体の面の数などについて考える際に、立体模型を触ったり図形学習の教具を用いて立体を作って考えたりする指導を行うケースも多いと考えます。実体験できることで、問題への興味・関心が高まったり図形に対する理解が深まったりして問題解決に主体的に取り組むようになります。

図をかいたりグラフをかいたりして考えるのも、スライドと同様に視覚に訴える学習であるため、子どもにとってわかりやすく、興味・関心が高まることになります。

計算するような学習では、前の時間に学習した内容について子どもどうしで復習の計算練習をタブレットを用いてペアで行ったりすることで、今日の学習への動機づけとなり、子どもは学習への興味・関心をもつことになります。

どのような学習内容の授業であっても、子どもが興味・関心を示す教材をさがす努力をしていただければと考えます。そのためには、子どもの日ごろの学校生活や家庭生活、友だちとの会話、数学や他教科における学習内容のなかから見いだせるように情報収集をすることを心がけていただきたいと考えます。

子どもが興味・関心を示し、解決してみたいと思うような問題は、子どもの主体的な学習を促すだけでなく、さらに、発展的な内容を考えるようになります。前出の丸太の問題でも、子どものなかから、「考え方はわかるが、実際の丸太の切り口に最大の正方形をかくには円の直径や中心を求める必要があるがどうすればよいのだろうか」という疑問が生まれました。既習の垂直二等分線の作図で解決できることに気づいてもらう必要がありますが、こうした学びは、子どもの学びを深めることにもなります。子どもが興味・関心を高める教材づくりにがんばっていただければと思います。


小宮賢治
本稿の執筆者 小宮賢治
公益財団法人 日本数学検定協会 理事

東京都公立中学校長、東京都中学校数学教育研究会会長等を歴任。現在は、東京都教職員研修センター 学習指導員(東京教師道場)として、数学の指導力を高めようとがんばっている先生方の指導を行っています。