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【数学の学習に主体的に取り組む子どもを育成する指導①】指導者の子どもに対する理解

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目次

はじめに

数学の学習に主体的に取り組む子どもを育成するために、教育現場として取り組むべき課題とは何か。現在、東京都教職員研究センターで東京教師道場の担当をし、指導力向上のためにがんばっている先生方の指導を行っている小宮賢治先生に、この大きな課題を解決するための、指導上の要点や、子どもたちとの向き合い方について、記事をご執筆いただきました。

今回は第1回として、【数学の学習に主体的に取り組む子どもを育成する指導】をテーマにご執筆いただいた「指導者の子どもに対する理解」を紹介します。

本記事の執筆にあたっての小宮先生からのメッセージはこちらの記事をご覧ください。
SAMEにおける「数学の学習に主体的に取り組む子どもを育成する指導」の執筆にあたって

指導者の子どもに対する理解

子どもは、自分の所属する学級に居場所を求めています。子どもどうしの関係は大切な視点ですが、指導者と子どもの関係も大切な視点です。子どもは指導者に自分を正しく理解してもらえることを望んでいます。自分のことを理解してもらえたと思ったとき、子どもは安心感をもって学級での学習に取り組むことができるようになります。学級担任が、学級経営を行うことと教科担任が教科経営を行うことは、基本は同じです。指導者は、授業を受ける子どもたちを集団として見ていますが、子どもたちは違います。指導者も集団のなかの子ども1人ひとりを捉えた指導をすることが求められます。そのため、日ごろから、忙しいなかでも意図的・計画的に1人ひとりの子どもにかける言葉を考え、短時間でもよいですから、子どもの考えを肯定する視点をもち、子どもと対話する時間を大切にしてください。

数学の学習に関しては、学習意欲の違い、学力の差、学習の仕方の違いが顕著に表れることがあります。

子どもが置かれた環境の違いを含め、正しく理解して、すべての子どもと一緒に課題を乗り越える気持ちで取り組んでいただきたいと考えます。

信頼関係が崩れている場合は、修正する取り組みに努めてください。

このような場面では、どのような対応を子どもに行いますか。

「授業に集中できないで、筆記用具等で遊んでいる」「指導者が説明をしているときに、他の子どもに話しかけている」

指導者の注意を受けて直す子どもは、場が分からなかった場合です。それ以外の子どもは、場を気にせず行っており、学習に取り組むことができないためです。

こうした子どもに、より厳しく注意しても、何も解決することはできません。

1例ですが、解決のためには、ワークシートやノート指導などを通して、意図的・計画的に子どものよいところを見つけて粘り強く対話を継続するなかで、肯定的に評価することを心がけてください。子どもの取り組みに変化が出てきます。

指導者と子どもとの間に厚い信頼関係が構築されたとき、指導者も子どもも数学の学習に対して、ともに主体的に努力することができるようになります。

読まれた方の参考になればと考えます。


小宮賢治
本稿の執筆者 小宮賢治
公益財団法人 日本数学検定協会 理事

東京都公立中学校長、東京都中学校数学教育研究会会長等を歴任。現在は、東京都教職員研修センター 学習指導員(東京教師道場)として、数学の指導力を高めようとがんばっている先生方の指導を行っています。