【数学的活動と日常生活⑫】数学的活動の道標 ③(その2)
- 指数関数
- 対数関数
- 不等式の表す領域
- 最適化
数学の学習に主体的に取り組む子どもを育成するために、教育現場として取り組むべき課題とは何か。現在、東京都教職員研究センターで東京教師道場の担当をし、指導力向上のためにがんばっている先生方の指導を行っている小宮賢治先生に、この大きな課題を解決するための、指導上の要点や、子どもたちとの向き合い方について、記事をご執筆いただきました。
今回は第10回として、【数学の学習に主体的に取り組む子どもを育成する指導】をテーマにご執筆いただいた「授業のまとめ(子どものことばでまとめる)」を紹介します。
本記事の執筆にあたっての小宮先生からのメッセージはこちらの記事をご覧ください。
SAMEにおける「数学の学習に主体的に取り組む子どもを育成する指導」の執筆にあたって
今回は、子どもたちが主体的に学び合い、相互に学びを深めてきた内容について振り返り、授業内容をまとめるようにする指導についての話をいたします。
授業では、すべての子どもたちに身につけてほしい目標があります。その目標を達成するために、子どもたちが問題解決の取り組みをするなかで、成就感を得られるように自力解決の際に1人ひとりの子どもに即して評価し、指導を行います。そして、グループや全体で生徒相互による学び合いを経て、授業の終わりに学んできた内容を振り返り、まとめをします。そのため、授業の目標と評価とまとめは、一体のものでなくてはいけません。
具体例で示します。第2学年図形の基本的な平面図形の性質に関する授業内容であったとします。本時の目標は、「平行線の性質や三角形の内角、外角の性質をもとにして、平行な2直線にはさまれた『く』の字に折れた線分がつくる角の大きさをいろいろな方法で求め、説明することができる」であったとします。適切な発問などにより子どもから引き出した問題は、「平行な2直線にはさまれた『く』の字に折れた線分がつくる角の大きさをいろいろな方法で求め説明しよう」であったとします。子どもたちの考える授業のねらい(めあて)は、「既習の平行線の性質や三角形の内角、外角の性質を用いて角の求め方を考え説明することができる」になることが考えられます。この授業の評価規準は、「基本的な平面図形の性質を見いだし、平行線の性質や三角形の内角、外角の性質を基にしてそれらを確かめ説明することができる」のようになります。子どもたちの問題解決場面では、補助線を用いて、平行線の性質や三角形の内角、外角の性質を用いて、いろいろな解法で問題を解き、グループ発表の内容を全体で考察するなどして学び合うことが考えられます。その後のまとめでは、授業で学んだこととして子どもたちから、「学習した平行線の性質や三角形の内角、外角の性質を用いることで、いろいろな方法で角度の求め方を説明することができた。その際に、考えやすいように工夫して補助線を引くことが大切である」といった内容が出てくることが考えられます。この例で、授業の目標は、ねらい(めあて)と表現は若干異なりますが、内容は同じものです。目標(ねらい)、評価規準、まとめの3つは、一体のものとなりました。そうすることで、子どもにとってもわかりやすい授業となります。また、授業の終わりに、自己評価をさせることがよくありますが、子ども自身と指導者ともに、今後の授業の参考になると考えます。
なお、授業で注意したいのは板書です。ICT機器を併用して板書することも多くなることと思います。板書計画の内容と板書後の内容を比較して考察することで、より一層子どもと協力した授業づくりをすることができるようになります。このことで、さらなる授業改善につなげていってほしいと考えます。
今回が最後になりますが、今までの連載の内容がみなさんの授業改善に何かしらのお役に立てば幸いに思います。みなさんのさらなるご活躍を期待して、連載を終えたいと思います。
東京都公立中学校長、東京都中学校数学教育研究会会長等を歴任。現在は、東京都教職員研修センター 学習指導員(東京教師道場)として、数学の指導力を高めようとがんばっている先生方の指導を行っています。