研究ファイル

【数学の学習に主体的に取り組む子どもを育成する指導③】既習内容の理解度の把握

  • 既習内容
  • 理解度
  • 知識・技能
  • レディネステスト
  • 正答率
アイキャッチ
目次

はじめに

数学の学習に主体的に取り組む子どもを育成するために、教育現場として取り組むべき課題とは何か。現在、東京都教職員研究センターで東京教師道場の担当をし、指導力向上のためにがんばっている先生方の指導を行っている小宮賢治先生に、この大きな課題を解決するための、指導上の要点や、子どもたちとの向き合い方について、記事をご執筆いただきました。

今回は第3回として、【数学の学習に主体的に取り組む子どもを育成する指導】をテーマにご執筆いただいた「既習内容の理解度の把握」を紹介します。

本記事の執筆にあたっての小宮先生からのメッセージはこちらの記事をご覧ください。
SAMEにおける「数学の学習に主体的に取り組む子どもを育成する指導」の執筆にあたって

既習内容の理解度の把握

子どもたちへの授業を行う際に、必要となる知識・技能の理解度などを把握しておくことの大切さは、指導にあたる人たちは当然のことと受け止めていることと思います。しかし、理解していると思っていたことがそうでなかったり、漠然ととらえていたりすることがあるものです。

ある中学校第3学年の授業で、小学校、中学校第1学年で学習している円周の長さを求めることができないというケースがありました。授業の内容は、そのこととは直接関係していないものでしたが、円周の長さを求める復習のための時間を設けることになりました。中学校第2学年では、円周の長さを求める学習を扱っていないために、忘れていたのです。指導者が当然だと思っていたことが覆されたのです。

この例からもわかるように、授業を行ううえで、子どもたちに必要とされる既習内容の理解度を正確に把握しておくことは、とても大切なことです。

次に、既習内容の理解度を把握するレディネステストについて具体例を用いて示します。

たとえば、中学校第1学年の「平面図形」の単元で、角度75°の作図に関する学習を行うとします。このときに、必要な知識・技能は何かを考えます。この授業で子どもたちに身につけておいてほしいことは、垂線の作図、正三角形の作図、角の二等分線の作図です。授業では、その方法を用いて角度75°が作図できる理由を説明できることが求められます。

また、コンパスと定規の利用のしかたも正しく理解しておく必要があります。コンパスは、円をかいたり長さを写し取ったりする道具、定規は2点を通る直線をひく道具として利用することへの理解です。

角度75°の作図に関する学習をする前に、学習の準備状況ができているかを把握するレディネステストを実施することが必要となります。

レディネステストを実施した後は、結果を考察します。正答率を確認し、誤答の要因として何が考えられるかを明らかにします。それを受けて、角度75°の作図に関する学習を行う前に、どのような指導を行っていけばよいか、角度75°の作図に関する授業の導入は、どのようにすればよいかを考えます。図形、とくに作図に関しては、学習する場面が限られているため、十分に理解できていない子どもが多いことが考えられます。

子どもたちが、角度75°の作図に関する授業に興味・関心をもち、子どもたち1人ひとりが自力解決に主体的に取り組み、グループ学習では、自分の考えを説明することができるような授業展開を、指導に当たる方は望んでいるものと考えます。そうした授業を実現するために、既習内容の理解度を把握するレディネステストの扱いに努めてほしいものと思います。


小宮賢治
本稿の執筆者 小宮賢治
公益財団法人 日本数学検定協会 理事

東京都公立中学校長、東京都中学校数学教育研究会会長等を歴任。現在は、東京都教職員研修センター 学習指導員(東京教師道場)として、数学の指導力を高めようとがんばっている先生方の指導を行っています。