子どもの個性を生かしながら、考える力を伸ばすには?子どもの学習能力を引き出す指導
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現在、東山中学・高等学校 で数学科教諭をつとめる鶴迫貴司先生。中高教員向けのセミナーや生徒向けのセミナーをはじめ、大学でのセミナーも行うなど、大学入試問題の分析のみならず、数学的活動と日常生活を往還する学びも伝えるべく、多彩な活動(執筆活動含む)を行っています。
今回は、鶴迫先生に、SAMEでの記事連載にあたりメッセージをいただきましたので紹介します。
こんにちは。私は京都市にあります東山中学・高等学校の鶴迫 貴司(つるさこ たかし)と申します。この度、SAMEにおける連綿的な寄稿をさせて頂く機会を賜りたいへん光栄に感じております。それと同時に、ご覧になられる皆様にとって、少しでもお役に立てることができるよう精一杯つとめさせて頂きますので、どうぞよろしくお願いします。
さて、SAME(Society(社会)、Arithmetic(算数)、Mathematics(数学)、Education(教育))のおもな目的は、
① 新しい学力観の中で育む算数・数学の学びの視点
② 時代の変化に対応することができるような学びの礎
③ 未来の社会基盤を照らす実用的な数学教育の必要性
であります。
また、2022年4月から高等学校におきましても新しい学習指導要領(平成30年告示)にもとづき、新たな「学び」が始まりました。その「学び」をかんたんに集約しておきますと
Ⅰ 生きて働く知識と技能を習得する
Ⅱ 思考力、判断力、表現力を伴う数学的活動に従事すること
Ⅲ 主体的に学びに向かう力と人間性などの育成
の3つの柱で整理されています。
ふだん、私は学校現場で教壇に立たせて頂いておりますが、大きな「教育的意義」の1つには、上記の①〜③を含め、未来を担う人材を育成するミッションもこれに含まれているものだと感じています。新しい学力観に沿う形で、日々生徒を前にし授業をするということは、問題の「解き方」を根底にするのではなく、数学の基礎・基本的な「考え」を土台にし、「定義」から派生した「知識と技能」を鮮明にし、1つひとつの基礎・基本な「知識と技能」を結びつけ、新たなものごとを創生していくことが、我々教師に課されているものではないかと感じる部分があります。また、それらがどのような場面で利活用されているのかといったことも含め、数学的活動をより濃くしていかなければならない側面もあろうかと思います。われわれが生きている中で、時代が求める学力観というものは、日本社会のみならず、世界や地球全体を視野に入れた「学び」であることはいうまでもありません。
さて、少し世界に目を向けてみると、とくに欧米では、カーボンニュートラルを語らずして今や企業は成り立たないレベルであり、どの業種でもサステナブルにもとづく理念に沿った事業開発・拡大が優先されています。日本でもこの動きは活発化されつつありますが、日本の教育現場では若い世代の方々に対し、それに特化したような対応のアクティビティー(授業展開)は現実的に少ないものだと推察します。欧米各国の動きをみると、それに付随するかのように、学校現場での対応は、カリキュラムや現代の「学び」に対応する取り組み、すなわち、地球規模を考えた教育的な活動にシフトした各科目の授業が展開されています。先進国だけではなく諸外国では「カーボンニュートラル」のみならず、われわれが生活している「地球」規模における諸問題を、あらゆる側面または角度からアプローチできるような教育的活動に勤しんでおり、どのようにすれば1つひとつの問題が解決できるのかを、教授および共有しているものといえます。教壇に立つ者として、日本においてもこのような観点をもつことによって、若い世代の方々には、教科や科目に関係なく、あらゆることをバランスよく学び、「無機質であったものを有機的なつながりをもったものへと変換していく学び」がより重点的に行われていく必要があると思います。この度の学習指導要領の改訂では、それらを大きく含む意味をもって存在しているものだと改めて感じることもできるでしょう。
そして、これからの学校現場の対応は、これまで以上に小学校・中学校・高等学校・大学・社会が連綿的に機能する「学び」のバトンを提供しなければならないでしょう。それは上記の理由もそうですが、世界的な基準の中における日本の将来を考えると、若い世代の方々が社会人となるタイミングで、即戦力として社会ニーズに見合うプラットホームを創起・提供できることを社会が求めていることになると感じるからです。以上のような観点から、このSAMEの記事におきましては、大きく分けて
(Ⅰ)現場目線による数学的な言語活動の構築について
(Ⅱ)新たな時代(未来)を見据えた数学的な題材を通して
の内容について、話をさせて頂きたいと思っています。(Ⅰ)では、上述させて頂きましたように、ふだん私は授業で、どのようなことを具体的に扱っているのかを含め、「時代」が求める数学的な「考え」について触れていきたいと思っています。基礎・基本的な内容をつなげていくこと、すなわち、1つひとつの「知識と技能」をつなぎ合わせ、それらを整理・集約しつつ、数と文字を通して育む言語活動も重要な位置付けとして話をさせて頂きたいと思っています。また、問題を「解く」楽しさだけではなく、その問題を採り上げる意義などについても含めることができればと考えています。その中では、上述した観点から「思考力、判断力、表現力」を養えるような「学び」にも触れ、教科書のコアな部分に浸りたいとも思っています。(Ⅱ)では、普段の授業で扱っている「数学」の内容が、どのような場面で日常生活や社会に実用され応用されているのかといった観点やその題材を採り上げ、数学の実用的な部分について触れていきたいと思っています。つまり、「数学的活動」と日常生活(社会的な変化に対応する数学的な観点)に関することについて述べていきたい思います。すでに高校の教科書にもそのような側面については一部掲載されていますので、より社会での利活用について触れておきたいと思っています。このように考えると、そのような数学的活動によって、若い世代の方々が新しい視点をもち、他分野と複融合的に重ね合わせることで、ある問題が解決できる可能性も生じるかもしれません。そのような「バトン」的な役割を担う題材も話すことができればと思っています。
最後になりましたが、ここに記し述べさせて頂く資料におきましては、私自身の拙い部分や発展途上の部分もあろうかと思いますが、それらを含め私は一個人的に精進しなければなりません。その際には、心柔らかにご鞭撻賜りますと幸甚です。また、ご覧になられておられるみなさまにとって、これらの資料が少しでもお役に立てればこれほど嬉しいことはございません。
SAMEでは、鶴迫先生の記事を連載予定です。
こちらのリンクからご閲覧ください。
東山中学・高等学校 数学科教諭
立命館大学理工学部数学物理学科を卒業後、同大学院物質理工学部で修士号を取得。その後、愛知県、高知県の私立中学・高等学校で務め、現在は東山中学・高等学校教諭。中高教員向けのセミナーや生徒向けのセミナーをはじめ、大学でのセミナーも行うなど、大学入試問題の分析のみならず、数学的活動と日常生活を往還する学びも伝えるべく、多彩な活動(執筆活動含む)を行っている。
※所属・肩書は当時のものです。